2009年12月25日金曜日

SoundTrack

今年も残すところ、後一週間。
とにかくスコアとサントラCDを買いまくった年だった気がします。

ジェリー・ゴールドスミスジョン・ウィリアムズといった
生きる巨匠の作品から、
ハンス・ジマー一派のものや、
ブライアン・トレイラーなどの若手まで。
数多くのサントラを聴いていると、色々と面白い事に気付く。
それがお仕事の依頼で楽曲を書く時、重要になってくるものだと思い、
現時点での考えをこうして記録しておこうと思ったわけです。

まず、年代によって、そして監督によって随分と音楽のあり方が
変わっているという点。

年代からすると、
ジェリージョンの作風は後期ロマン派のそれに
近いものを感じるけれど、
ジマーに至っては音楽、というよりは
BGMに寄っている気がして、
ブライアンになるとよりその傾向が
顕著になっている、と感じること。
また、昨今のスコアになればなる程、モチーフの数が増え、
加えて統一性が薄れていくこと。

作家としては、前者に比べて後者の手法(またはオーダー)は、
何倍も楽なものだったりする。
激しいアクションシーンになったらテクノビート(死語)に加えて
ギターがギュンギュン鳴ったらそれっぽいよね、みたいに。
確かに状況音楽としては、誰が聴いてもそう聞こえるのだけど、
裏返すとどの作品に対しても、その音楽が当てはまってしまうことになる。
少なくとも、監督さんが「どんな作品でもソレと解る音楽をお願いします」
と言ってオーダーしてくる事は無い。

なのでその作品のテーマに関して、どんな細かな事でもヒアリングし、
そこからモチーフを決めていくのだけど、基本的に作品のテーマって、
大抵1つなんですよ。
例えば、近未来で剣と魔法のファンタジーで家族愛と環境問題と
戦争の儚さ、人種差別を豪華なCGで!みたいな作品があったとしたら、
面白そうだと思う?(笑)
一貫性が無いと、限られた時間の中で表現する内容が薄くなってしまう。


音楽も同じ。


Amazonなどのサントラレビューとか見ていると、「どれも似たような音楽で
つまらない」といったものを良く目にする。
歌モノのアルバムを作っている訳ではないんだけど。
「聴く」ことだけに限定した場合は、もちろん色々なモチーフやジャンルが
あった方が楽しめるのは当然僕も同じ。
一環したモチーフがあるからこそ、限られた時間の中での緩急がついて
作品がより深く、立体的になっていくものだと思っています。

ジェリージョンの代表作として「スター・トレック」「スター・ウォーズ
があるけれど、ここでも明確にこの違いが見て取れる。
誰もが知っている「
スター・ウォーズ」だけど、個人的にルーカスという人は
映画に対する音楽の付け方、あり方、それの効果を完全に理解しているか、
ちょっと疑わしいと思っている。
E.T」「インディ・ジョーンズ」「ジュラシック・パーク」「フック」といった
スピルバーグ作品に書かれたジョンのスコアはどれも素晴らしい。

スター・ウォーズ」の音楽も素晴らしいし、映画史上に残る名作であることは
疑い様のない事実だけれども、「メインテーマ」「ジェダイのテーマ」
「帝国軍のテーマ」「ベイダー卿のテーマ」「レイア姫のテーマ」・・・。
パッと挙げるだけでも山のようにモチーフが存在する。
これを統一させているのは、もちろんジョンの手腕もあるけれど、
もしかしたら「オーケストラだから」といったシンプルな事実に依存している
だけかもしれない。
数多いテーマを要求したのがルーカスなのか、プロデューサなのかは解らないけど。

作品を見ている観客は、ベイダー卿が歩いている事は100も承知な訳で、
そこにワザワザ専用のモチーフを流すことは、物凄く稚拙でマヌケだと感じる。
ハリウッド作家の中でも、数少ない自分のスタンスを貫ける立ち位置でいるのだから
その観点において、非常に罪深い。

しかし、携わった作品で監督の世界観を再現する事が我々の仕事なのも事実。
一個人としての芸術家である観点や趣味趣向は、そこに挟み込むのはプロではない。
とは言え、根本的に出発点でもあり、ゴール地点でもある目的は、
その作品に対して観る方々が、よりその世界に没頭し、喜怒哀楽といった感動を
音楽の演出によって、少しお手伝いすることなのだ。
確かに監督の作品かもしれないけれど、そこに幸いにもチームの一員として
組み込まれたからには、音楽をどう使って頂くか、こちらからの提案も
大切なお仕事だと思うのです。

音楽の作り方は、もしかするとその道具が変わっただけで、
本質的な部分では何も変化が無いかもしれません。
だけど、「こんな感じの音作っておけば良いでしょ?」ってスタンスは、
何の解決にもならないし、良い作品が生まれるわけがない。
それ以前に、職の放棄ですらあるかもしれない。
結局、数ある作品を観て、音楽の使われ方を研究して、
監督さんの目指す方向と、自分の生み出せる音楽を摺り合わせていくしか
無いんですね。それはとても地道で大変な作業ですが、
最も楽しい事でもあるんです。

今年耳にした言葉の中で、「もっと音楽分析しないとね」という話しが
出ていたのが一番頭に残っているのだけど、音楽の分析(アナリーゼ)を
するという意味ではなくて、もっと広くて根本的な音の演出がどうなっているか、
どうするべきか、研究して試行錯誤しよう、って意味なんだな、と
今になって理解する。

今年も実りある、良い一年でした。
いやいや、まだノルマ山積みですけどね(笑)。


さて、今夜は忘年会。
一年を忘れ去る、というよりは、今年の成果と課題を確認しつつ、
来年の目標を決める感じになるでしょう。
色々大きな動きがありそうです。またそれは後ほど。

皆様、最後のラストスパート頑張りましょう!

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